1度ならず2度までも君に恋をする


 いつも通り出勤の準備をし、電車通勤の為駅に向かう。

 雨の日は駅に居る人全体がどんよりと暗い雰囲気を放っていた。

 雨は嫌いじゃない。

 あの人と結び付けてくれるかもしれないという希望があるからも、もちろん理由としてある。それとこれは昔からなのだけれど、雨が降っているこの瞬間が好き、と言うより、雨が止んだ後の空と独特な匂いが好きだ。

 あの独特な匂いは"ペリトコール"と呼ばれる物らしい。雨粒が地面や植物の葉などに衝突したとき、微小な粒子を含んだ気泡が放出される。その後、植物由来の油が付着した気泡が乾燥した粘土質の土壌や岩石に当たったときに、それらがもつ成分が気泡の中に取り込まれ、空気中に巻き上げられ、それが雨特有の匂いになる。

 その当時の私には難しくてこの説明のすべてを理解することが出来なかったけれど、雨の匂いについて検索を掛けてくれた私の当時の恋人がいて、その時に楽しそうに話していたことは覚えている。私と一緒に気になる事を調べて一緒に知れるその瞬間が尊い時間なのだと、不器用な彼が懸命に伝えてくれたのをいまだに覚えていた。

 この知識と思い出が結びついて、いつまで経っても忘れられず雨が降る度に思い出してしまうのはそのせい。

 空から細かい粒で降る雨が、駅のホームの屋根にあたり、屋根で溜まった物が大きな粒になって落ちていく様をただただ無表情でボーっと見つめていた。
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