1度ならず2度までも君に恋をする
 乗車する電車がブレーキをかけて線路と摩擦しながら止まり、キーッという高めの音に意識は引き戻された。仕事に行く前に思い出す事では無かったと軽く視線を下に落とし、人の歩く流れに乗りながら電車の中へと乗車していく。

 別れてから五年、私ももう二十六歳になった。時折異性と交際するも、長く続く事も無く結婚への焦りを感じる年齢ではあるけれど、どこかであきらめもついていた。

 理由は私が真紘くんのことを忘れられていないから。

 彼が大学卒業をする時に「別れよう」と言われ、そのまま疎遠になった。今はどこで何をしているのかもわからないし聞きもしない。酷い振られ方をしたのに忘れられないのはあの日触れた彼の温かさや不器用さが好きで、ずっと心に残っているから。誰と交際しても彼ならと比べて、誰とも上手くはいかなかった。


(また、思い出してる)


 こうして毎日空き時間があると思い出しては、いまだ忘れられない自分に自己嫌悪を感じる。いつまで経っても未練がましく、まだ過去に縋り続け先に進めない自分に呆れ、そんな自分が嫌いだ。

 どうして振られたのかもわからないまま、幸せだった日々は終わりを迎えた。あの時、振られたことが衝撃で何も聞けなかった。別れを告げられた時のことは覚えていて、嫌だと情けなく縋ったあの日。冷静になって振られた理由を聞こうとした時には、彼は私の前からいなくなり、連絡も取れない様になっていた。

 そんな痛い過去の記憶が、今もまだ私を過去に縛り付けている。
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