1度ならず2度までも君に恋をする
「もし、佐久間さんに告白されたらどうするの?」
 
「うーん…」


 声を漏らし、考えてみるけれど現実味がなくて、想像はすぐに途切れた。そんなこと起こるはずもないし、考えても仕方がない。


「付き合い、はしないと思う」

「どうして?」

「佐久間さんは本当にいい人だと思う。前も言ったかもしれないけど、穏やかな気持ちでいられる人。だけど…、そういうのじゃないんだよ」


 自分の中の答えは、はっきりしていた。好きになれないわけではなく、最初から恋愛感情として見ていない。

 どこまでも憧れの上司であり、頼れる先輩。きっと佐久間さんも同じように、私のことは部下か後輩としてしか見ていないはず。


「佐野さんとうまくいかなくても、佐久間さんは選ばないの?」


 夏帆ちゃんの問いに、私は迷わず首を横に振った。

 真紘くんがだめだから代わりの人を探すなんて考えられないし、ましてや佐久間さんをその穴埋めにするような真似は絶対にできない。


「真紘くんがだめだから佐久間さんに、なんて絶対にできないよ」


 少しだけ笑って、私はようやくグラタンにスプーンを伸ばした。熱々のホワイトソースを掬い、口元へ運ぶ手をふと止める。


「そういえば、夏帆ちゃんの方は最近どうなの?」


 問いかけた瞬間、わかりやすく彼女の肩が跳ねた。


「…どうって?」


 自分に矛先が向いたことを察したのか、あからさまに声のトーンが落ち、物言いが大人しくなった。私はその反応に口元を緩ませ、彼女の顔を覗き込んだ。


「夏帆ちゃんも、仕事だけじゃなくなってきたかな~って」

「いや、仕事一筋よ。仕事だけ、なんだけど…」

「けど?」

「元彼に再会したんだけど、ゴミクズ化してた」

「え?」


 穏やかではない言葉に、思わず呆気にとられる。

 夏帆ちゃんは険しい表情のまま深い溜息を吐き、レストランの窓の外へ視線を投げた。

 澄み渡った晴れの外の景色とは裏腹に、彼女の横顔は今にも嵐が吹き荒れそうなほどに、険しい表情を見せていた。
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