俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
◇2
トイレから戻ってくると、けいちゃんはキッチンで洗い物をしていた。
見るからに大きい男の背中に声をかける。「疲れてるでしょ。わたしがやるからいいのに……」
「おまえさき、風呂入ってきな」と彼が顔だけで振り向く。と前に戻り、「あがったら紅茶、いれてやんから」
……いいのかな。
お互いの家で食べたあとは、大概、わたしが洗い物をしている。というのは、一人だとやる気になれないけど、誰かのためだと思うとなんか妙に働く気になれるのだ。
それでも、つい、ぼやいてしまう。
「……けいちゃん。せっかく早く帰れた日に、ご飯食べる相手がわたしなんかでよかったわけ」
すると。彼がからだごとこちらを振り向き、す、と手を伸ばすと。
ふに。と泡まみれの手でわたしの鼻を摘まんだ。
「わ。ちょっとぉ……」いまだ彼の手は離れない。抗議の声をあげてみると、真剣な瞳に囚われる。続いて、彼は怒気をはらんだ声で、
「『なんか』って言うなよ、自分のことを。
おれは、綾乃といると楽しい。だからそうしているんだ」
彼の、大きな手が離れていく。