俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
おれの好きな、松岡綾乃も、同じなのではないかと。
* * *
「いっちじょうせんぱーいっ」
先鋭的な思想を述べる書籍から目を離し、顔を起こせば、誠治は、彼女の笑みと出くわした。
よく、笑うようになった。大学生活が充実しているのだろう。
「なに、読んでんですか」ひょい、と誠治の向き合う本を覗こうとする挙動がなんだかいじらしい。
誠治は目を細めて答えた。「アルチュセール。滝沢教授の思想を理解するなら必読の書だよ」
「あ、そうなんですか」喜ばしいことに、彼女も滝沢教授の授業を『刺激的で面白い』と言っている。三年生にあがったら、彼のゼミに入りたいそうだ。
場所を考慮し、誠治は声量を抑えて尋ねる。「……ところできみはなにを借りに図書館に?」
「えっとぉ、フロイトかエリクソン辺りを読もうかなあと」
意外なチョイスだ。誠治と同じく国際学部に所属する彼女は、アメリカ研究のコースを志望しているはず。
心理学の本なんか、なにしに。