俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
「あーもう最悪。さっき授乳したからもう授乳で寝かす手ぇ使えないし」よっこいしょ、と綾乃が優香を抱っこしたまま立ちあがる。

「……なにしてんの」と丈一郎が訊く。すると、綾乃が、首をひねると、険しい顔を向け、

「けいちゃんが起こしちゃったから、抱っこで寝かせようとしてんでしょ!」

 更に、優香が、泣く。状況最悪。負のループだ。

 綾乃が、丈一郎の横をすり抜け、居間のほうに行ったと思いきや。

 ベランダのドアを開く音がしたから、丈一郎は本気で驚いた。「なにやってんだよ!」

 既にベランダ用のサンダルに片足を入れた綾乃が振り返る。「なにって、……寝かしつけ」

「外。寒くないのかよ。赤ちゃんが風邪引いたら、どうすんだよ」

 怒りの感情に綾乃の目がかっと見開いた。「別に、一時間もいるわけじゃないし! あのさあ、実家でも、この子ずーっと何時間も泣くから、そのとき、庭とか連れだすとマシになったの! けいちゃんが起こしちゃったから、わたしはこの子を寝かせようとしてんの! だからもう、邪魔しないで!」

 ――邪魔。
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