俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 綾乃の弱いだろうところを突いた。

 綾乃の目が見開いた。沸きあがる感情を押さえ込み、「言っていいことと悪いことがあるでしょう」と怒りに満ちた声。

「けいちゃん。無理解にもほどがある。いい加減にしてよ。……初めての育児に苦しんでるひとに言う台詞じゃないでしょそれ。

 わたし、確かに実家に帰ってたけど、だからって、遊んで暮らしてたわけじゃないよ。

 一時間に四回も授乳したり、何時間も泣いてる優ちゃんをあやしたり、産後のダメージの戻らないからだで抱っこしておむつ替えてお世話しての繰り返しで、……本当に、大変だったんだよ。

 なんで、けいちゃんには、それが分からないの」

「さっき、スマホでいろいろ調べた」丈一郎は、綾乃の感情に引きずられないよう留意しつつ、口を動かす。「産後って確かに大変なんだってな。けどな。みんな、それなりに大変なことやって生きてるんじゃないのか? おれ、営業やってていろんな人間の人生見てきたけど、誰のどんな人生も大変だぜ? 正直、育児だけ極端に特別扱いされる意味が分かんねえよ。だってさ。
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