俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 綾乃が、手に持っていたチラシを落としてしまった。いや――わざと、落としたのか。というわけで、二十枚以上はあるだろうチラシが布団のうえに散らばる。

 かき集め、丈一郎は目をあげる。「……なにやってんの。わざと?」

「……けいちゃんのほうこそ、なんなのよ」

 押し殺した綾乃の声。「ピザなんて、……食べたくても食べれるわけないじゃない。そんなことも、知らないの?

 あのさあ。ひとが、育児でてんてこ舞いで苦しんでたときに、けいちゃんは、いったいなにをしてたの。ひとりで、羽伸ばしてたり、してた? 女の子と遊んだり、友達と飲みに行ったり、した?」

「するわけないだろ」丈一郎は怒気をはらんだ声で答えた。「綾乃のほうこそなんなんだよ。意味分かんねえよ。育児してるのがそんなに偉いのか? 世の中のお母さんがみんなやってることじゃねえか。おれだって、仕事で疲れてるのに、綾乃のこと考えていろいろやってんのに、そんな言われよう、いくらおまえがおれの妻だからって、される筋合いもねえし意味分かんねえよ。おまえ、――」一旦丈一郎は言葉を切り、

「……実家に帰って、甘やかされすぎたんじゃねえの?」
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