俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
「一時間でも二時間でもからだ休めるだけでだいぶ違ってくるわいね。……そういうん、ほんとは、杉野さんが言ってやらな駄目やがに……、ごめんなあ。お義母さんの手前、わたしも強う言われんのよ。今泉(いまいずみ)さんにはようしてもろうとるさけ……」

 今泉とは、綾乃の実家の家事手伝いをしてくれる女性の名だ。その女性は杉野とは違い、プライベートに干渉せず、仕事は仕事として割り切ってやってくれている。綾乃も、小さい頃から今泉には世話になったから――直接的にではなく、家の手伝いをしてもらうというかたちではあるが――今泉の、松岡家における立場を悪くしたくなどなかった。これはこれ、それはそれだ。

 義姉の勧めに応じ、綾乃は、なかに入り、敷きっぱなしになっている布団に横になった。杉野の顔すら見なかった。もう、どうでもよかった。

 とにかく、寝たかった。

 とにかく。楽になりたかった。
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