俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 確かに。うちの子は、他の子よりも、よく泣く傾向にあるけどまあ、からだに異常があるわけでもないし。元気に育っているわけだから。心配ないと思うよ……」

 実を言うと実家で。と綾乃は言い足す。「あんまり泣くから大丈夫なんですかこの子ーって小児科駆け込んだこともあるんだけど。

 そんなもんですよ。

 の一言で、帰された……」

「ははは」声を立てた丈一郎が笑いを止める。……例えば。授乳中にスマホをいじる母親も世の中にはいるようだが――

 赤ちゃんを授乳できる期間など限られている。限られたこのときを大事にしたい。ゆえに。

 綾乃は、授乳中は赤ちゃんを見続ける主義だ。ごく、ごく、ごく……。自分のなかの大切ななにかが赤ちゃんに届けと願いながら。穏やかに見守る女神の表情。母子の織りなす神聖な瞬間。それを目の当たりにして丈一郎は笑いを口許に収めたのだった。

「授乳。夜中に何回してんの?」と丈一郎。

「二三回くらい……。多いときで、22時と0時と3時と6時。そっから7時8時にすることもあるよ。十時間のあいだでマックス7回ペース」
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