俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
「なんか馴染みじゃないところで切ってもらったって感じがおれの目にはまるわかりだから。

 いつもの店で切ってもらったらなんか気分も変わんじゃね?」

 ――これは。

 塞いでいる綾乃を元気づけるための行動なのか。

 久方ぶりに触れる丈一郎のやさしい言動に、綾乃は、困惑する自分自身も、感じていた。大部分は彼の考えのほうに引っ張られているのだが……。

 沈黙する綾乃に丈一郎は言葉を畳み掛ける。綾乃は、できれば、すぐさま寝かせてやりたい状況だ。彼女はまた三時間後には起きなければならない。「それか。明日さ。

 いつもの珈琲屋でなんっも考えずに頭ぼーっとさせる。……そんだけでも。

 なんか違えんじゃねえの? 元気があんなら夕方くらいまで出かけてたっていいぜ?

 飯は、おれが作る。麻婆豆腐とカニ玉で良ければな。

 もし母乳の出がよくなる惣菜とかあれば、別に買ってきてくれると助かる」

「じゃあ、そうする……」丈一郎が綾乃へと身を寄せる。やさしく彼女の頭の後ろに手を添え、

「おれのために。優香のために。頑張っててくれて、ありがとう。

 自分のことは二の次……。どころか。
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