俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 実を言うと里帰り出産から戻ってきたあの一ヶ月間のあいだに、頭に緑の紙がちらついたのは一度や二度ではない。それでも。

 ――お母さん業からちったあ開放されな。

 あの発言及び言動に救われた綾乃である。あれ以来。ものすごいイクメン、に変わった、というほどではないが。それでも。

 綾乃は自分の気持ちを素直に伝えるようにしたし。――丈一郎も。疲れたとか言いながら子どもの世話をするようになった。

 彼が変わってくれなかったら――二人目を作ろうだなんて思わなかったはず。

 綾乃が片面焼けたホットケーキをひっくり返すと、優香がパパのお皿を近くに持ってくる。「――はい! ママ!」

「うーんとあと一分くらいかかるかなぁ」

「いっぷんー?」

「じゃーママとじゅう数えて見よっかあ」

 いーち。にーい。しゃーん……。

 三人揃って数え始めているというのに丈一郎は腰を浮かせ、画面を見ている。「決まっ……、てか決めろよおまえら! 金貰ってんだろこら!」

「子どもたちのまえで汚い言葉遣いしないでください」冷たく夫を見やる綾乃。「悪影響です」

「……てか、うがっ、あーっ……」
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