俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 優香がこっちに戻ってきてカトラリーを並べるのをちらと目で見つつ、愛花にお皿を持たせ、焼きたてのホットケーキを乗せる。うわーおいちそー! と目を輝かせる愛花。優ちゃんがママ似で愛ちゃんがパパ似。目元が……、そっくりだ。

「パパ―! もうできたよー!」しびれを切らすのは優香。できたよー、と輪唱する愛花。ここでようやく、丈一郎は重い腰を起こした。

 かたちのよい鼻をひくひくさせ、「んー。なんかいい匂いすんねー」

 至極当たり前のことを言う夫の発言にはシカトを決めこみ、「パパのぶん優ちゃん焼く?」と持ちかければ焼くー! と挙手する娘。

「……あり。おれのぶんないの?」

 定位置に座る丈一郎及びおたまを駆使する娘を見届け、綾乃は、「いま焼いてる」

 たべたいたべたい! とじたばたする娘を押さえつける構図にはもはやキムタクの要素などどこにも残っていない。どちらかといえばジャイアンの領域だ。

 三つ。ちょっといびつなかたちのホットケーキが出揃うが……、

 いただきまーす、する者が誰もいない。……娘たちのこういうところに、いつも、綾乃は感心する。

(やっぱりパパはパパなんだなあ……)
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