俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 ただし。それだと、優香の保育園の送り迎えをどうしたものか……。特に産後の一ヶ月間。水も触ってはいけないと言われている時期である。産後に無理をするとあとが怖い。――頭を悩ませていた綾乃だが。横浜に住む丈一郎の母が、綾乃の産後一ヶ月間、ほぼ毎日来てくれ、保育園に通う優香のケアをし、家事全般をしてくれた。休日は。綾乃が下の子の世話をしている間、丈一郎が優香の遊び相手をしてくれた。おかげで優香はパパによく懐いている。……おもちゃは、買い与え過ぎる傾向にあるが、そこは目をつぶるほかあるまい。

 みんなの思いやりに、自分は救われている。

 そっと、綾乃は、目を閉じた。胸のなかに、大切な思い出を封じ込めるように。――誰が不幸とか。どちらが大変とか。不幸自慢をしていても仕方がない。丈一郎の言っていたことには一理ある。誰しもみな大変ななにかを抱えている。大事なのは。

 自分と意見の違う相手と出会うたび、喧嘩腰の対応をするのではなく――同じフィールドに立ってみる、ことである。
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