俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~


 唇に、丈一郎の潤いが伝わる。

 それを通して、彼の愛情が、胸の奥へと、熱い鉄の塊となって、綾乃のなかへ降りてくる。触れたらもう――引き返せない。

 自分がなにに対して悩んでいたのか。丈一郎には、お見通しだったのだ。

「けい、ちゃ……」突き上げる感情と戦いながら、綾乃は声を絞った。「あたし、ね……、いつも。けいちゃんに、もらってばかりで、なんにも、返せてないのかって、すごく、不安で……」

「綾乃」彼の指先が綾乃の涙を拭う。「ごめんな、おれ、……気づいてたのにな。綾乃の不安をちゃんと取り除いてやれなくて、……悪かった」

「けいちゃんが、謝ることなんて、ないの。わたしが。わたしが……」

「どんなやり方が正しいかなんて、誰にも決められやしないだろう?

 おれたちには、おれたちにふさわしいやり方が、あるんだ。

 だからそれを、二人で見つけていこう。

 おれたちにならできるよ、絶対。

 ……聞くけど綾乃。

 触られんの、いや?」
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