俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 あいも変わらず彼はわたしのほうを見ようとはしない。ポン酢のほうに入れて、豚肉で野菜を巻きつけている。その食べ方、なんか美味しそうだ。

 よく見れば、彼の頬はもともとシャープなほうだけれど、その痩け具合がひどくなっているような……。目の下のくまだってちょっと濃いし。

 ここでわたしは、自分にはまったく他人のことが見えていないことに気がついた。

「まあな。そんでも、ひとには、自分だけの力で壁を超えなければならない時期があるだろ。いまがそのときって話。……ま、頑張るよ」

「あまり、……無理、しすぎないでね……」

「優しいのな綾乃(あやの)ちゃん」やっと彼がわたしを見て笑った。笑わなかったのはほんの三十秒足らずのことだったけれど、わたしにはひどく長く感じられた。「おれのこと心配してくれてんの?」

「あったりまえじゃないの。友達なんだから」

「友達、ね……」瞬時。彼の目に悲しいなにかが過ぎったように見えたが――気のせいだろう。

 一緒に美味しいものを食べ。

 元気づけることを優先しよう。
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