俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 彼女がなにか喋るたび、同じ思いを共有している感覚に、ここちよく満たされていく。

「ねえ。せっかくだから、学食でお昼食べてこっか」彼女の笑みが、丈一郎の目に眩しく映る。と、その彼女が思いついたように両手を合わせ、「あ。あと、滝沢(たきざわ)先生にも、会えないかなあ……」

「部屋、覗いてみようぜ。講義中じゃなけりゃあ、話せるかもしれない」

 笑って丈一郎は彼女の手を取った。足取り軽く気持ちも、軽い。

 思いが、行動を定義づける。

 彼女の、さきほどの笑みが、大学時代の彼女の笑みと重なった。あんな思いをすることは二度とない。ほかの男を見て狂いそうにある感情を抑えこむことなど。

 これから――

 ずっと、二人で幸せに生きていく。

 道中、彼女もずっと笑顔だった。丈一郎は、彼女の笑顔に守られながら、思い出の道を進んだ。緑が街路樹が、やけに彼の目にまばゆく映った。


 * * *


 丈一郎と彼女がゼミと卒論でお世話になった教授は、変わらず元気そうだった。
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