俺が好きなのは、お前だ。~男友達の積年の片想い相手はわたしでした~
 朝起きればトイレに行き顔を洗うように、彼は彼女を欲する。といっても。義務的にそれを行わないよう意識はしている。

 むしろ、顕在化するのは彼の本能のほうではあるが。

 つき合って八ヶ月が経過した頃にようやく、彼女は自身の悩みを吐露した。丈一郎にとっては、長い時間だった。あれ以来別段、彼女の行動に変化が現れたわけではないが。感じやすいのも声を出すのも変わらず。

 満たされた表情を、するようになった。

 愛されていることへの自信が、彼女のなかに満ち満ちていくのが分かる――そのことが、丈一郎には嬉しかった。

 よって現在。丈一郎が黙っていようとも、彼女は不安げな顔をしたりなどしない。ぼうっとキャンパスを見やり、「懐かしいね」と口にする。

 あ。あそこ。けいちゃんとお昼よく食べた学食。変わんないね……。

 図書館。すっごく綺麗になったね。なか、覗くことできるのかなあ。見たいなあ……。

 丈一郎にとっても、彼女と過ごした四年間は、大切で思い入れの強い期間であった。

 青春の痛みと喜びを伴う、二度と訪れない輝き。

 それにしても、建物とか、ぜんぜん、変わんないね。綺麗だなあ……。
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