第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

背徳の午後

そして私は、気持ちを切り替えて臨んだ。
——王妃教育。

無視されても、気にしない。
そう決めてから、視界が少しだけ広くなった気がした。

すると、一人の令嬢が、そっと声をかけてきた。

「私、伯爵家のミラと申します」

「こんにちは。
私はティアナです」

ミラは一度、小さく息を整えてから、頭を下げた。

「これまで……無視をするような態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした」

「いえ」

短く返すと、ミラは顔を上げ、言葉を続ける。

「ローゼ様には、皆……立場上、逆らえなくて」

「お気になさらず」

そう返すと、ミラは少し困ったように微笑んだ。

「ローゼ様は、幼少の頃からディラン様の婚約者候補として、厳しい教育を受けてこられたそうです」

「それに……ディラン様のことを、本気で想っておられるようで」

「ですから、あなたのことを、よく思われなかったのでしょう」

「……そうなんですね」

ミラは、真っ直ぐに私を見る。

「貴女が、無視されても前を向いて立っている姿を見て……
自分がしてきたことの愚かさに、気づかされました」

「本当に、すみません」

そう言って、もう一度頭を下げる。

「もし……今からでもよろしければ、
私と、お友達になっていただけませんか?」

一瞬、言葉に詰まった。

「あ……ありがとうございます。
そんなふうに言っていただけて、嬉しいです」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

そう答えて、私はミラの差し出した手を取った。

その手は、少しだけ震えていたけれど——
とても、温かかった。
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