第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
ミラはうっとりと頬杖をつき、夢見るように言った。
「でも、いいですわよね〜」
「なにがですか?」
「家が決めた相手じゃなくて……ちゃんと、お互いに想い合える人と出会えること。素晴らしいことですわ」
「まあ、そうかもしれませんね」
好きでもない相手と結婚する未来を覚悟していた時期もあった。
それでも最後に“好きにしろ”と言ってくれた父には、今も感謝している。
ミラは椅子にもたれ、ため息まじりに空を仰ぐ。
「あー、素敵な殿方いないかしら〜。できれば騎士団の方とか」
「そうなんですか?」
「ええ。お坊ちゃま貴族様より、ちょっとワイルドな方のほうが好みですの」
「へぇー」
ミラはグッと身を乗り出す。
「ほら、ティアナ様のラピスラズリ伯爵家にいる騎士様も素敵ですわよね!」
…だれのことだ?っと
思わず首を傾げる。
「銀髪で水色の瞳の方ですわ」
「セナのこと?」
「そうですそうです! もう、惚れ惚れしますわよね〜! あのクールな瞳……“氷の騎士様”って、ちまたでは有名ですのよ!」
「へぇー」
セナ、人気あるんだな。
密かにファンクラブがあるのは知っていたが…
すごい。
ミラは胸の前で手を組んで、うっとりとため息をついた。