第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「来る!」

正面から魔宝獣が跳躍する。

私は踏み込み、蒼い刃を横に振る。

「蒼き風よ――裂け!」

斬撃は獣を吹き飛ばす“壁”となり、
その反動で体勢が揺らいだ瞬間――

「今」

テオが私の影を踏み、背後へ滑り込む。

「紅く鋭く――穿て、スピネル」

紅い拘束が獣の四肢を縛り、
次の瞬間、魔宝石だけを正確に貫いた。

断末魔はない。
崩れ落ちる音だけが、冷たく響く。

だが終わりではない。

左右から、同時に2体。

私は前に出て、あえて大きく魔力を放つ。
蒼い風が渦を巻き、視界を奪う。

――囮。

「右、任せたよ」

「了解」

背後から、風を切る音。
テオが完全に気配を消し、一体の背後へ回り込む。

拘束。
断絶。

私は残る一体へ踏み込み、至近距離で刃を突き立てる。
魔宝石が砕け、獣が霧散する。

一瞬、静寂。

令嬢たちの息を呑む音が、遅れて届く。

……視線。

上だ。

ベランダから、すべてを見下ろす目。

――陛下。

私は刃を下ろさず、あえてその視線に応える。

見せたわ。

この力は、
あなたの“管理下”に収まるものじゃない。

背後で、テオが低く笑う。

「……いい顔してるよ、お嬢さま」

戦いは、まだ終わっていなかった。
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