第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
駅に降り立つと、
「やあ」
眩しい金髪と、余裕の笑顔が視界に入った。
「……げ、なんでいるの」
「ディラン」
「迎えに来た」
「必要ないんだけど」
即座に噛みつくテオに、ディランは肩をすくめる。
「俺の婚約者を、連れ回すからだ」
「いい加減、婚約破棄しないかな」
「するわけがない」
低く、静かな声。
二人の間に、ぴり、と空気が張りつめる。
剣を抜いていないだけで、ほとんど睨み合いだった。
……はあ。
私は小さく息を吐く。
「とりあえず、帰りましょうか」
「そうだな」
「……うん」
そう言った瞬間、
左右から、同時に手が伸びてくる。
……本当にもう。
「一人で歩けます」
ぴしっと言い切ると、二人とも一瞬だけ動きを止めた。
「私は誰かの“取り合いの戦利品”じゃないの」
静かに、でもはっきり。
「帰るわよ。——二人とも」
そう告げて、私は一歩前に出る。
ディランとテオは、一瞬だけ互いを見て——
同時に、ふっと息を吐いた。
「はーい」
「ああ」
二人が返事をするが、諦めと納得が混じった顔。
二人ともそれ以上は何も言わず、
私の少し後ろを歩き出す。
……珍しい光景だ。
さっきまで火花を散らしていたのに、
今は肩を並べている。
背中に感じる気配は二つ。
だけど、不思議と重たくはなかった。
夕風が頬を撫でる。
一歩ごとに、
今日の穏やかな時間が胸の奥で静かにほどけていった。
「やあ」
眩しい金髪と、余裕の笑顔が視界に入った。
「……げ、なんでいるの」
「ディラン」
「迎えに来た」
「必要ないんだけど」
即座に噛みつくテオに、ディランは肩をすくめる。
「俺の婚約者を、連れ回すからだ」
「いい加減、婚約破棄しないかな」
「するわけがない」
低く、静かな声。
二人の間に、ぴり、と空気が張りつめる。
剣を抜いていないだけで、ほとんど睨み合いだった。
……はあ。
私は小さく息を吐く。
「とりあえず、帰りましょうか」
「そうだな」
「……うん」
そう言った瞬間、
左右から、同時に手が伸びてくる。
……本当にもう。
「一人で歩けます」
ぴしっと言い切ると、二人とも一瞬だけ動きを止めた。
「私は誰かの“取り合いの戦利品”じゃないの」
静かに、でもはっきり。
「帰るわよ。——二人とも」
そう告げて、私は一歩前に出る。
ディランとテオは、一瞬だけ互いを見て——
同時に、ふっと息を吐いた。
「はーい」
「ああ」
二人が返事をするが、諦めと納得が混じった顔。
二人ともそれ以上は何も言わず、
私の少し後ろを歩き出す。
……珍しい光景だ。
さっきまで火花を散らしていたのに、
今は肩を並べている。
背中に感じる気配は二つ。
だけど、不思議と重たくはなかった。
夕風が頬を撫でる。
一歩ごとに、
今日の穏やかな時間が胸の奥で静かにほどけていった。