第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
誕生日まで
「お嬢様の誕生日、もうすぐですね」
ユウリがさらっと口を開く。
「そうだね」
「誕生日パーティーは、三大伯爵家が集まりますから。
かなり盛大なものになりますね」
「……めんどくさい」
「主役が言う台詞ではありません」
即座にツッコミが入る。
「だってさ。
にこにこ笑って、手を振って、愛想よくして……」
思い浮かべただけで、肩が重くなる。
「おまけに厄介なのは――」
ユウリが、わざわざ間を置いた。
「殿下もお見えになりますね」
「……」
嫌な予感しかしない。
「おそらく、エスコートなさりたがるかと」
「……それは、いや」
反射的に言ってしまった。
ディランが嫌なのではない…
ただ
目立つ。
騒がれる。
噂になる。
あと、何より面倒だ。
「お嬢様」
「わかってる。社交として必要なのは」
一応まだ婚約者だ。
そう言いながら、頭を抱える。
「ああ……
もう、当日だけ透明人間になりたい」
ユウリが小さく息を吐いた。
「それができたら、皆そうしています」
……ごもっとも。
「……はああ」
盛大にため息をついていたところに、
コンコン。
「お嬢様、ルイ様がお見えです」
アリスがお辞儀する。
そしてその瞬間。
「ティアナちゃーん!!」
勢いよく扉が開く。
ミルクティー色の髪とピンク色の瞳が素敵な美形デザイナーだ。
お姉言葉だがれっきとした美青年。
「ルイ」
「誕生日パーティーのドレス!
試作品、持ってきたわ!」
満面の笑みで、布包みを掲げるルイ。
「早速、着てもらえる??」
きらきらした視線に射抜かれ、
私は思わず視線を逸らした。
――逃げ道、なし。
「……ずいぶん早いね」
「当然よ!
だって主役なんだから!」
ノリノリのルイに、
私は小さくため息をつき、苦笑いを浮かべる。
「……わかった。着るよ」
「やった!」