追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「っしゃ、ありがとうございます! てか柊木さんって爪めっちゃ綺麗ですよね~、ネイルってどこのサロン行ってます?」
「あっはい、ありがとうございます。ええと、私が通ってるのはですね……」

 確認を終えると、田口さんは流れるようにして得意の雑談を開始した。
 鵜ノ崎さんはまだ戻らない。「柊木さんってモデルのレミちゃんに結構似てませんか」とか「僕レミちゃんの新しいCMめちゃめちゃ好きで~」とか、田口さんはとにかくお喋りだ。彼のペースに合わせ、話を聞いたり聞き流したりする。

 その隙を縫い、せっかくだしこの人にも訊いてみようかな、と前々から気になっていたことを尋ねてみた。

「そういえば、鵜ノ崎さんの出張のお土産ってちょっと豪華じゃなかったですか?」

 話が途絶えたタイミングで訊いてみると、田口さんはきょとんと目を見開いた。

「出張? こないだのですか?」
「いえ、ドイツの」

 顎に指を添えた田口さんは、考え込むような素振りで小首を傾げている。
 元来中性的な人だ。ジェンダーを感じさせない今みたいな仕種を見かけるたび、ついつい可愛いなぁという感想がよぎってしまう。
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