追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
第5話 追わないで、好きだって思わせないで
《1》
待ち望んでいた人が戻ってきてくれたおかげで、胸が安堵に満たされていく。
目の前のふたりを無視してまっすぐ私の傍へ歩み寄ってきた鵜ノ崎さんは、私の隣に立ってから初めて、酒巻さんと姫田さんへちらりと目を向けた。
「座ってろって言っただろ。具合は?」
「す、すみません。大丈夫です」
私の肩に手を添えてから、鵜ノ崎さんは耳へ唇を寄せてくる。
責める調子ではまったくなかった。それどころか、甘さを感じさせる声音だった。距離もたしなめたくなるくらいに近い。腰を抱かれた上に、仕事中なら考えられないような顔の覗き込み方をしてくる。
会場内ほど混み合っていないだけで、ロビーにも人の姿はある。
人目があるのに、とぎくりとしてから、違う、人目があるからこそなのかも、とようやく理解が及んだ。
鵜ノ崎さんは今、目の前のふたり、そしてたまたま居合わせた周囲の目撃者たちへ、わざと私たちの距離感を見せつけている。
「こちらのおふたりは?」
尋ねられ、ふ、と喉が震える。
わざとだ。知らないわけがない。クルーズ船の甲板で話したとき、酒巻さんの名は鵜ノ崎さんの口から先に出たのだから。
目の前のふたりを無視してまっすぐ私の傍へ歩み寄ってきた鵜ノ崎さんは、私の隣に立ってから初めて、酒巻さんと姫田さんへちらりと目を向けた。
「座ってろって言っただろ。具合は?」
「す、すみません。大丈夫です」
私の肩に手を添えてから、鵜ノ崎さんは耳へ唇を寄せてくる。
責める調子ではまったくなかった。それどころか、甘さを感じさせる声音だった。距離もたしなめたくなるくらいに近い。腰を抱かれた上に、仕事中なら考えられないような顔の覗き込み方をしてくる。
会場内ほど混み合っていないだけで、ロビーにも人の姿はある。
人目があるのに、とぎくりとしてから、違う、人目があるからこそなのかも、とようやく理解が及んだ。
鵜ノ崎さんは今、目の前のふたり、そしてたまたま居合わせた周囲の目撃者たちへ、わざと私たちの距離感を見せつけている。
「こちらのおふたりは?」
尋ねられ、ふ、と喉が震える。
わざとだ。知らないわけがない。クルーズ船の甲板で話したとき、酒巻さんの名は鵜ノ崎さんの口から先に出たのだから。