追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「美味い!」

 堪らず漏れたというニュアンスの声と、大きく見開かれた目を見て、私は心底ほっと胸を撫で下ろした。
 姉の言っていた〝カス発見器判定〟は、現時点でもすでに限りなく白に近い。

「良かったです。私、得意料理ってこれしかなくて」
「なに言ってんだ、この味持ってれば十分世界征服できる」
「ふふ、大袈裟。でも嬉しいです、おばあちゃんを褒められてるみたいで」
「おばあちゃんもだけど柊木のことも褒めてるからな」

 こういう褒められ方には慣れていない。
 笑い話にしてしまおうとしたのに、直球で褒められたせいで、私の口はうまく動かなくなる。

「あ……ありがと、ございます」

 見る間に顔が熱くなる。赤くなっているだろうな、と自分でも分かる。
 カス発見器判定は完全に白だ。最初から決まっていた。姉に言われるまでもなく当たり前のことだ。

 鵜ノ崎さんがカスなわけはない。絶対にない。
 だってこの人は、私の、特別な。

 ぐ、と喉の奥が重くなる。
 その痛みを、私はほろほろの大根を強引に口に詰めて流し込むことでごまかした。
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