追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「なんでしょうか」
「付き合ってもない男をひとり暮らしの部屋に呼ぶとか、普通は褒められたことじゃないからな」

 は、と声が漏れる。
 随分呆れ気味に言われたものの、先日キス魔になった人がそんなふうにたしなめてくるのもおかしな話ではないかと思う。そこはかとなく今さら感がある。

「知ってます。ソースは……まぁ酒巻さんなどですが」

 鵜ノ崎さんのことも含めてしまいたかったけれど、そこは踏み留まった。
 一方で、鵜ノ崎さんはげんなりと顔を歪めてみせる。

「またあいつかよ。嫌すぎる、あいつも社会的に抹殺してやりたい」
「やめてください、そんな物騒な」

 社会的な抹殺ならできなくはなさそうだ。
 可能か不可能か、ギリギリのラインを目指した言い回しをしてくるから逆に怖い。

「もし十年前に戻れたら、俺、絶対あのときの柊木に声かけるんだけどな。後悔しかない」
「……本当でしょうか」
「嘘なわけないだろ」

 挟んだ返事は、どこか猜疑心の滲む声になった。
 本気で悔しがっていることが声からも態度からも伝わってくるから、狡いな、と思う。
< 170 / 254 >

この作品をシェア

pagetop