追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
『一緒に生きてくなら、添い遂げたいって思える人とがいい』
『身内の中で、俺だけ今さらそういう夢を見てる』

 あのとき聞いた鵜ノ崎さんの夢を守りたいと思う。
 鵜ノ崎さんがその夢を見る相手が私であってほしい、とも。

 だから今、レミさんに頷き返すことは決してできない。

「……なんで?」

 唇を引き結んで返事を待っていると、やがてぽつりと小さな声が聞こえてきて、レミさんの顔がくしゃりと歪んだ。
 CMや雑誌で見かける完璧な美貌からは想像もつかない、人間らしい感情に塗り潰された顔だった。

「ずっと追いかけてた……やっと追いつけたのに、なんでそんなこと言うの……」

 涙を滲ませたレミさんの苦しげな顔も姿も、昔の自分を彷彿とさせた。
 私も、今の彼女と同じようにうずくまったことが過去にある。知っている。重なる。だからこそ胸が痛む。

 よく見れば私にはちっとも似ていないその顔は、広告で見る顔よりもSNSで見る顔よりも、今、一番人間らしく見えた。

「本当にごめんなさい。でも」

 言葉に詰まりそうになりながら、追いかけるばかりだったかつての恋を振り返る。
 執着の終わりは本当に苦しい。私も知っている。嫌というほど。
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