追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 強い力で開かれたドアのせいで激しく鳴るドアベルの下、そこに立っていたのは鵜ノ崎さんだった。
 泊まりがけで京都へ向かったこの人が、今日ここを訪れられるはずはないのに、どうして――吐息とともに、は、と再び間の抜けた声が零れる。

 鵜ノ崎さんの息は派手に上がっていた。
 ああ、確かにここまで走ってきたらしき足音がしていたな、と混乱から抜けきれずじまいで思う。緊張が緩んだ反動で身体が震え、膝から力が抜け落ちそうになる。

「ちょっと……なんで、あんたが、ここに」

 背に庇ったレミさんが、呆然と声をあげる。
 明らかに戸惑いを覗かせている店のスタッフが、鵜ノ崎さんを捕らえようとして、けれどそれを「待って」と止めたのは他ならぬレミさん自身だった。

 同時に、鵜ノ崎さんが低く呟く。

「外させろ。話がある」

 スタッフを外させろ、という意味だと遅れて気づいた。

「外して」
「っ、ですが……」
「いいから」

 一歩踏み出して鵜ノ崎さんと対峙したレミさんが、食い下がるスタッフへ首を横に振ってみせる。
 キィ、とドアを鳴らしてスタッフがスタッフルームに去っていく否や、入り口のドアの前で静止していた鵜ノ崎さんが一気に足を踏み出してくる。見る間に私たちの傍まで歩み寄ってきた彼は、無言で私の腕を強く引き、レミさんから私を引き剥がした。
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