追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 強引な所作だったのに、安堵が全身に広がっていく。
 腕を引かれた私は鵜ノ崎さんにされるがままで、その様子を見ていたレミさんもまた、「ちょっと!」と荒らげかけた声をそれきり途絶えさせた。

 決して短くはない沈黙の後、先に口火を切ったのはレミさんだった。

「実家に行ってもらったはずだけど。行かなかったの?」
「行ってない。あんたの祖母さんちで話つけてた」
「は?」

 目を瞠るレミさんを、鵜ノ崎さんの背に庇われながら、困惑とともに見つめる。
 話が見えない。鵜ノ崎さんは京都には行っていなかった。レミさんの実家は京都だけれど、彼女の祖父母は東京に住んでいるはずだ。『あんたの祖母さんち』という言葉を反芻しつつ、息を呑んで話の続きを待つ。

「妙だと思ってたんだ。俺のことも結婚のこともどうでも良さそうだったわりに、後出しで話、蒸し返してくるとか」

 上がっていた彼の息はすっかり落ち着いている。
 不機嫌そうに眉を寄せたレミさんが、睨みつけていた鵜ノ崎さんから分かりやすく視線を外した。

「あんたの祖母さんからいろいろ聞いた。あんたがお祖母ちゃん子だって話、あらかじめうちの親から聞いといて良かったよ」
「……なにが言いたいわけ?」
「あんたが俺との縁談に食いついたの、俺が実家で柊木の名前を出してからだな」
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