追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「私もです。私も、鵜ノ崎さんじゃなきゃ駄目だから……」

 口づけの合間を縫って零すと、まるで返事のように口づけは深くなる。
 ひとしきりキッチンでキスを交わした後、鵜ノ崎さんは私の口から耳元へと唇を動かして囁いた。

「なあ、今日も泊まってくれるよな?」

 声から、微かに嫉妬が読み取れる。レミさんへの負の感情がまだ収まらない様子だ。
 事実、性別は関係ない。昨日、レミさんは〝好きな人〟という言葉を使って私への感情を表した。

 憧れと恋はよく似ているし、ときには同一と捉えられることもある。
 少なくとも、鵜ノ崎さんはそういうことだと受け取ったのだと思う。

「駄目か?」
「だ、駄目ではないです。けどそれなら準備しないといけませんし、一度アパートに帰らないと」

 不安にさせたいわけではないから、伝える声は遠慮がちになる。
 すると、眉尻を下げた彼に再び頬を撫でられた。不安というよりは、心なしか不満そうに見える。
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