追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「いいえ、とんでもないです。あのときはかなり忙しかったですよね、小沢さんもお疲れ様でした」

 笑い返しながら、なんだかあの頃がものすごく昔に思えてくる。
 まだ二週間程度しか経っていないはずなのに、まるで何ヶ月も前のことみたいだ。あれからいろいろありすぎたからかもしれない。

 一部始終を思い出していては仕事にならなくなりそうで、気を引き締め直して私は周囲を見回し、あれ、と疑問符が浮かんだ。

 鵜ノ崎さんがいない。

「ええと、鵜ノ崎さんは?」
「ああ、実はついさっきですね」

 教えてくれたのは谷俣さんだ。
 鵜ノ崎さんは今、フルリモート勤務のエンジニアさんと打ち合わせ中らしい。

「社長室にいらっしゃるんですけど、少し長くなるそうで、ミーティングは先に進めておいてほしいとのことでした。では定例ミーティング、始めちゃいましょうか」

 よろしくお願いします、と居合わせている人たちの声が重なる。

 各セクションの直近での進捗や報告を、手元のタブレット端末に共有された資料を眺めつつ聞き進めていく。
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