野いちご源氏物語 五一 浮舟(うきふね)
石山(いしやま)(でら)へのお参りが中止になった浮舟(うきふね)(きみ)は、()(あま)る時間で昨日のことを思い出している。
匂宮(におうのみや)様は情熱的なお手紙をお書きになった。
さて、誰をお使者(ししゃ)にするべきかしら。
ここは慎重(しんちょう)にお決めになるべきよ。
宮様の乳母子(めのとご)時方(ときかた)では世間に顔が知られているから、時方の下働きをしている者で、何も事情を知らない男をお使者になさった。

山荘(さんそう)では右近(うこん)が受け取る。
他の女房(にょうぼう)が誰からの手紙かと尋ねるので、
「昔の恋人が私とよりを戻したいと言って、家来に手紙を届けさせたのです。先日 (かおる)(きみ)がお越しになったときに、その人はお供として来て、ばったり再会したのですよ」
と言っておく。
つぎつぎに(うそ)を重ねてでも、秘密を守るしかないの。

そんなことをしているうちに月が変わってしまった。
宮様は(あせ)っていらっしゃるけれど、宇治(うじ)まで簡単にはお行きになれない。
<悩みすぎてますます死にそうだ>
心細くなってお(なげ)きになる。
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