野いちご源氏物語 五一 浮舟(うきふね)
浮舟(うきふね)(きみ)を都へお迎えになる前に、(かおる)(きみ)にはどうしてもなさっておくべきことがある。
正妻(せいさい)(おんな)()(みや)様にお許しをいただくことよ。
内親王(ないしんのう)という(とうと)いご身分を考えれば、きちんと(すじ)を通さないわけにはいかない。

「ご不快(ふかい)かと恐縮(きょうしゅく)ですが、実は長らく世話をしてやっている女がおります。田舎(いなか)に置いているのが気の毒ですので、この屋敷の近くに呼び寄せてやろうと思うのです。
私は幼いころから出家(しゅっけ)を望む変わり者で、人並みに結婚するつもりもありませんでした。ところがこうしてあなた様を頂戴(ちょうだい)し、人並みの人生を歩むことになったのです。そうしますと、ちょっと目をかけた程度の女でも、それなりに(あつか)ってやらなければと思うようになりました。このままでは仏様の(ばち)が当たりそうな気もいたしまして」
とお願いなさる。

「私は嫉妬(しっと)とやらの仕方も存じませんもの」
いかにも高貴(こうき)姫宮(ひめみや)様らしく、おっとりとお許しになった。
(ちち)(みかど)に私の悪口を申し上げる人もおりましょう。世間と言うのは意地の悪いものですから。しかしご心配なさることはありません。その女は、あなた様が気になさるような身分の者ではありませんので」
ご正妻に安心していただくように、真面目にお話しになる。
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