野いちご源氏物語 五一 浮舟(うきふね)
乳母(めのと)も心配している。
「なんだか(むな)(さわ)ぎがするわ。奥様も不吉(ふきつ)な夢を見たとお手紙でおっしゃっていた。夜の警備(けいび)は念入りに頼みますよ」
と命じる。
浮舟(うきふね)(きみ)はつらく聞きながら横になっている。

それから乳母はいろいろと女君の世話を焼いて、
「お食事を召し上がらないのはいけません。お(かゆ)だけでも」
(すす)める。
<自分ではしっかりしているつもりだろうけれど、この人も年を取った。私が死んだらどこに行くのだろう>
女君(おんなぎみ)は乳母のこれからを気にかける。

乳母にも死ぬことをほのめかしておきたいけれど、そんなことをすれば驚いて泣くだろうから、かわいそうで何も言えない。
右近(うこん)は女君のそばで寝る支度(したく)をする。
「姫様はお考えすぎなのです。そういう人の(たましい)は体から出てふらふらさまよい歩くと申しますから、それでお母君(ははぎみ)の夢に姫様が現れなさったのでしょう。(かおる)(きみ)匂宮(におうのみや)様か早くお決めになって、あとはもうどうとでもなれと開き直っておられませ」

そう言ってため息をついたとき、女君は(そで)を顔に押し当てて横になっていた、という。
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