100回目の恋カレー
天然人たらしで男子は勿論、女の子にモテる涼真が、いつか誰かの押しに押されて取られてしまうのではと焦りは募るばかり。

じゃあ後悔する前に告白しようと思うかと思えば、そうじゃない。

居心地の良いこの関係を壊すのが怖くて、涼真への想いに蓋をして、隠し続けている意地っ張りな自分が心底恨めしい。

「……はぁあ」

「何、どした? 悩み?」

彼が不思議そうな顔をしてこちらを覗き込む。

この距離の近さも朝から心臓に悪いからどうにかして欲しいけど、言ったことはない。

嬉しいのに、恥ずかしい。
嫌じゃないのに、素直になれない。

恋ってほんと厄介なモノだとつくづく思う。

「香恋?」

「なんでもない……」

この状況で目の前の相手に、悩んでいるのは貴方のことですからね、だって好きだから、なんて到底言えるわけもない。

「ふぅん。ま、俺でよければ何でも言えよ。香恋のことなら何でもわかるし知ってるし」

じゃあこの気持ちもわかるし知ってるわけ?と喉から出かけた言葉をのみこんでキッと睨む。

「変な言い方やめてよね」

「お。また怒った? 眉間のシワ、えっぐ」

「うっさい」

ポカっと痛くないように涼真の胸を叩けば、オーバーリアクションで彼が「肋骨三本やられたー」なんておどけて痛がってみせる。

ずっとこうして二人で並んで歩いていけたらいいのに。私の隣にずっといてくれたらいいのに。

そんな決して口に出せない言葉を脳内に浮かべれば、初夏と呼ぶには早い微熱を含んだ風がふんわり頬を掠めていく。
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