はじめまして、私の知らない婚約者様

第1話 婚約破棄

「ここにいたのか! ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢」

 威勢のいい声が聞こえて振り向くと、端正な顔をした赤毛の男が、こちらに向かって指を差していた。さらに私が首を傾げると、睨みつけていた青い瞳が鋭くなる。

「誰……ですか?」
「惚けるな!」
「いや、本当に誰?」

 出会って早々、怒鳴るような男に敬語など不要。しかも私の質問に答えない。ならば私だって、ちゃんと向き合わなくったっていいよね。

「まず、見ず知らずの人間に指を差され。且つ、怒鳴られるいわれもないんだけど?」

 腕組みまでして言ってやると、先ほどまでの威勢はどうしたのか。少しだけ怯んだ顔をした。けれど赤毛の男の傍らにいる、金髪の少女が「ブルーノ様、怖いっ」と言ったからだろう。良いところを見せたいのか、再び私を睨みつけてきた。

 けれど私には、金髪少女の言葉が気になった。

「ブルーノ?」

 聞き覚えのある名前に、頭を巡らす。だが、その前にブルーノと呼ばれた赤毛の男が口を開いた。
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