完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
……お前、まさか。
迅とは長い付き合いだ。
迅の祖父の代から獅堂家に仕え、俺が生まれた時から一緒にいる。
物心ついたころには、すでにいつも側にいた。
だからわかるんだよ、お前の考えていること。
でもだめだ。
花音は俺の婚約者だから。
俺は花音の肩を引き寄せた。
「花音さんのことは俺が面倒を見る。お前は残党がうろついてないか外を見てこい」
「……承知しました」
迅が頭を下げ、扉へ向かう。
その時だった。
「……要さん……」
小さな声が聞こえた。
腕の中の花音が、眠ったまま身じろぎする。
そして……
俺のジャケットを、ぎゅっと掴んだ。
「……」
一瞬、体が固まる。
花音は目を閉じたまま、息を吐いた。
まるで安心しているように。
……無意識か。
迅が一瞬だけこちらを見る。
だが何も言わず、視線を外した。
「……失礼します」
静かにそう言い、部屋を出ていく。
扉が閉まり、控え室に静寂が落ちた。
花音の頭に手を置き、柔らかい髪をそっと撫でる。
「……無防備すぎんだろ」
花音がピクッと動く。