完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~


本当は……

そんなに顔をするな。

俺は大丈夫だ。

お前は何も心配しなくていい。

そう言って、安心させてやりたかった。

ふと、脳裏に浮かぶ。

花音の頬に触れる自分の姿。

そして……そのまま抱きしめる。


……抱きしめる?

俺は小さく眉をひそめた。

なぜ、こんなこと考えた?

胸の奥に、妙な違和感が残る。

それは不快というより……

知らない感情だった。

俺は花音を……





コンコン、と静かなノックが響く。

「要様、今よろしいでしょうか」

「ああ」

ドアを開けて入ってきたのは迅だった。

「失礼いたします」

俺はソファに腰掛けたまま言う。

「花音さんは部屋か?」

「はい……お食事をほとんど召し上がっておりません」

「そんなに今日のことがショックだったのか……」

「かなり落ち込んでいらっしゃるようです」

俺は小さく息を吐く。

「……気にするなと言っても無駄だな」

「ダンスのこともですが……」

そこで言葉を切る。

「他に何かあるのか」

「……いえ」

迅がわずかに視線を伏せる。

「それから、黒耀から連絡が入りました」

「さっきの奴らか?」

迅はゆっくり首を振る。

「いいえ」

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