完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
本当は……
そんなに顔をするな。
俺は大丈夫だ。
お前は何も心配しなくていい。
そう言って、安心させてやりたかった。
ふと、脳裏に浮かぶ。
花音の頬に触れる自分の姿。
そして……そのまま抱きしめる。
……抱きしめる?
俺は小さく眉をひそめた。
なぜ、こんなこと考えた?
胸の奥に、妙な違和感が残る。
それは不快というより……
知らない感情だった。
俺は花音を……
*
*
コンコン、と静かなノックが響く。
「要様、今よろしいでしょうか」
「ああ」
ドアを開けて入ってきたのは迅だった。
「失礼いたします」
俺はソファに腰掛けたまま言う。
「花音さんは部屋か?」
「はい……お食事をほとんど召し上がっておりません」
「そんなに今日のことがショックだったのか……」
「かなり落ち込んでいらっしゃるようです」
俺は小さく息を吐く。
「……気にするなと言っても無駄だな」
「ダンスのこともですが……」
そこで言葉を切る。
「他に何かあるのか」
「……いえ」
迅がわずかに視線を伏せる。
「それから、黒耀から連絡が入りました」
「さっきの奴らか?」
迅はゆっくり首を振る。
「いいえ」