完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

向かった先は、人気のない特別棟の廊下。

夕方の光が長く伸び、足音だけが静かに響く。


「突然お呼び立てして、申し訳ありません」


獅堂様は立ち止まり、私の方を向いた。

その距離が、思ったより近い。

整った横顔。
長いまつげ。
伏せがちな視線さえ、計算されているみたいに綺麗で。


……ほんとうに、王子だ。


「今朝の件ですが……お話は、すでにご両親から伺っていますか?」


私はこくりと頷いた。


「はい……」

「そうですか。それなら話が早い」


獅堂様は、ほっとしたように微笑んだ。


「改めまして。政略結婚という形にはなりますが……これから、どうぞよろしくお願いいたします」


深く、丁寧なお辞儀。

その姿は、まるで社交界の見本のようで。
同い年だなんて、信じられないほど大人びて見えた。


「い、いえ……こちらこそ……」


頭の中が追いつかないまま、私はぎこちなく言葉を返す。


「詳しい説明は、改めて我が家でさせてください。今度、こちらから正式にお迎えに上がりますので」


我が家で。
正式に。

一緒に暮らす、現実が一気に近づいた気がした。


「……はい」


そう答えながら、ふと胸の奥がざわつく。

こんなにも綺麗で、背が高くて、落ち着いていて。

< 12 / 57 >

この作品をシェア

pagetop