完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
向かった先は、人気のない特別棟の廊下。
夕方の光が長く伸び、足音だけが静かに響く。
「突然お呼び立てして、申し訳ありません」
獅堂様は立ち止まり、私の方を向いた。
その距離が、思ったより近い。
整った横顔。
長いまつげ。
伏せがちな視線さえ、計算されているみたいに綺麗で。
……ほんとうに、王子だ。
「今朝の件ですが……お話は、すでにご両親から伺っていますか?」
私はこくりと頷いた。
「はい……」
「そうですか。それなら話が早い」
獅堂様は、ほっとしたように微笑んだ。
「改めまして。政略結婚という形にはなりますが……これから、どうぞよろしくお願いいたします」
深く、丁寧なお辞儀。
その姿は、まるで社交界の見本のようで。
同い年だなんて、信じられないほど大人びて見えた。
「い、いえ……こちらこそ……」
頭の中が追いつかないまま、私はぎこちなく言葉を返す。
「詳しい説明は、改めて我が家でさせてください。今度、こちらから正式にお迎えに上がりますので」
我が家で。
正式に。
一緒に暮らす、現実が一気に近づいた気がした。
「……はい」
そう答えながら、ふと胸の奥がざわつく。
こんなにも綺麗で、背が高くて、落ち着いていて。