完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
低く、はっきりとした声。

命令するような、絶対的な声。

「俺の目の届くところに引きずり出す」

誰なの、この人……

昼間、優しく笑っていた要さんと。

さっき、頭を撫でてくれていた要さんと。

同じ人だなんて、思えない。

『……了解しました、K』

通話が切れる。

要さんはしばらくそのまま動かなかった。

やがて、小さく息を吐く。

さっきまでの張りつめた空気が、わずかに緩んだ気がした。

私は慌ててドアを音が出ないように閉め、ベッドへ戻る。

心臓がバクバク鳴っている。

今の……何なの?

K……?

アルティウス……?

密輸……って

分からないことだらけで、頭が追いつかない。

でも、一つだけ分かることがある。

――要さんには、私の知らない顔がある。

それは前にこの部屋に忍び込んだ時に見た顔と一緒。

遠い世界の人みたいな顔。

胸が、ぎゅっと締めつけられる。

要さん……あなたは一体何をしているの?

なんのために?

その時、ドアが静かに開く音がした。

慌てて目を閉じる。

足音が近づいて、ベッドの横で止まる気配がした。

「……まだ寝てるか」

ドキッとする。

でも、動けない。

次の瞬間――

また、あの優しい手が髪に触れた。

夢で感じた、あたたかい手。

夢だと思っていたけど……要さんだったの?

さっき聞いた声が、頭から離れない。

「……こんな俺でも側にいてくれるか」

ぽつりと落ちる声。

寂しいような、苦しいような声。

要さんがこんなこと言うなんて……

胸が締め付けられる。

そんなの……離れられるわけ、ないよ。

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