完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
数秒の沈黙が漂う。
「……そうね」
一人が小さく頷く。
「申し訳ありませんわ、早乙女さん」
「つい興味本位で……失礼いたしました」
すっと引いていくお嬢様たち。
さすが切り替えも綺麗。
……よかった。
みんなそれぞれ席に戻り、ほっと息をつきかけたその時。
「……なんだそれ」
小さな声に、びくっとして振り返る。
大我さんが、じっとこちらを見ていた。
「え……?」
「助けたつもり?」
「ち、違います……!」
慌てて否定する。
「ただ……少し困っていらっしゃるように見えたので……」
「……は」
小さく息を漏らす。
「変なやつ」
「え……」
「普通、ああいうの適当に乗るか、流すかだろ」
「……」
「わざわざ止めるとか、損するタイプだな」
損……?
そうなのかな……
考え込んでしまう。
その様子を見て、大我さんがふっと笑う。
「俺の一言で顔が変わるの、わかりやすくていいな」
「え?」
「おもしれーわ」
「面白いって……こっちは真剣にっ!」
「ま、助かった。だから教えてやるよ」
空気が一瞬変わる。
「昨日言ってただろ?獅堂要のこと」
ドクンと心臓が大きく音を立てた。
触れてはいけないような、でも知りたいような。
その時、要さんが教室に入ってくるのが見えた。
「あーあ、来ちゃった」
残念そうにつぶやくと、私の耳元に近づき
「今度詳しく、な?」
とささやき、また机に突っ伏した。
……この人に近づいたら危険だって、わかってる。
要さんが言ってた。
〝あいつは嘘しか言わない〟と。
どこまでが真実かわからない。
でも……2年前の要さんのことを知ってるのはこの人だけ……。
――その選択が、後で自分を苦しめることになるとは知らずに。