完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
さっき、大我さんに言った言葉……“分かってる”なんて言ったのに。

本当は、全然余裕なんてなかった。

キスされたって、〝好き〟とかそういうことを言われたわけじゃないもの。

「……行くぞ」

低い声に、はっと顔を上げる。

「え……?」

「ここにいても仕方ねぇだろ」

大我さんが、軽く顎で出口を示す。

確かに、もう交流会は終わり。

生徒たちも、少しずつ会場を後にし始めていた。

「……はい」

小さく頷いて、歩き出す。

会場を出る直前、もう一度だけ振り返った。

誰もいなくなり始めた空間。

さっきまでの華やかさが、嘘みたいに消えている。

その中に、要さんの姿はもうなくて。

胸の奥が、きゅっと締めつけられる。

「……花音」

前から呼ばれて、慌てて視線を戻す。

「ぼーっとすんな」

「あ……すみません」

小さく謝って、足を速めた。

「……」

そのまま隣に並んだけど、言葉は出てこない。

でも隣にいる存在が、少しだけ現実に引き戻してくれる気がした。

……私。

ぎゅっと、指を握る。

さっき言ったこと、本当にそう思えてるのかな。

分からないまま、私は会場を後にした。


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