完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「……もう」
困ったように小さく笑って、そっとその手に触れる。
名残惜しいけれど、指をゆっくりとほどいた。
起こしてしまうわけにはいかない。
「……またあとで」
聞こえないくらいの声で呟いて、静かにベッドを抜け出した。
身支度を整えて、もう一度だけ振り返る。
変わらず眠る姿に、少しだけ安心して……そっと部屋を後にした。
廊下に出た瞬間、ひんやりとした空気が頬に触れる。
「……ふぅ」
小さく息を吐く。
なんとかバレずに出られた……
その時、コツンと足音がした。
「……おはようございます、花音様」
「……っ」
振り返ると、そこにいたのは……迅さんだった。
完全に、見られていた。
「じ、迅さん……おはようございます……」
ぎこちなく挨拶を返す。
朝早い時間なのに、いつも通り整った姿。
その視線が、静かにこちらを見ている。
「……随分と、お早いですね」
穏やかな声だけど……どこか冷たい。
「え、えっと……」
言葉に詰まる。
どう言い訳しても、意味がない気がして。
沈黙が落ちた。
「……要様のお部屋から、ですか?」
静かに、確認するように言われる。
「……はい」
小さく頷くしかなかった。