完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
その瞬間、空気がわずかに張り詰める。

迅さんは、ゆっくりと息を吐いた。

「……そうですか」

それだけ言い、責めるわけでもなく声を荒げるわけでもない。

「……分かっては、いたのですが」

ぽつりと、落ちた声。

そのまま、少しだけ視線を逸らす。

「実際に目にすると……思った以上に、堪えますね」

「……っ」

胸が、きゅっと痛くなる。

迅さんは、もう一度こちらを見た。

その目は、いつもよりずっとまっすぐで。

「本来なら……このようなこと、考えるべきではないのです」

「……このようなこと?」

「私は要様に忠誠を誓った身ですから」

真剣な目で見つめられ、動けない。

「ですが……止められない」

少しだけ、視線が落ちる。

「花音様があの方の隣にいるのを見て……嫉妬している自分がいる」

「……迅さん……」

思わず名前を呼ぶと、迅さんはふっと切ない表情で笑った。

「困ったものです。本来なら、祝福するべき立場だというのに」

「あのっ……」

「ですが」

もう一度、まっすぐ見つめられる。

「私は、諦めるつもりはありません」

静かに、でも確かに。

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