完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「お二人が幸せならば良いと思ったこともありました。しかし……この家のいざこざに巻き込まれ、苦しんでいるあなたをこれ以上見ていたくないのも本当です」
「迅さん……」
「私なら……花音様にこんな想いをさせない」
それは初めて見せる迅さんの思いだった。
いつも私を陰から支えてくれていた迅さん。
辛いときは必ず側にいてくれた……
「困らせて申し訳ありません。でもどうか……そのことだけは、覚えておいてください」
その言葉が、胸に重く落ちた。
「……はい」
小さく頷くしかできない。
こんな時でも思い浮かぶのは、要さんの顔なのに。
すぐに断ることはできるけど、今までの事が頭をよぎり、口に出せなかった。
私は迅さんがいたから、ここまでこの家で頑張って来れたんだもの。
迅さんは私を見て、少しだけ表情を緩めた。
「それでは、朝食のお時間までにお戻りください」
いつもの調子に戻った声。
けれど……すれ違う瞬間、ほんの一瞬だけ。
「……あまり、無防備な姿を他の男に見せないでください」
小さく、耳元で囁かれた。
「……っ」
足が止まりそうになる。
でも振り返ることはできなかった。
――胸が、ざわざわしている。
甘い余韻のはずだったのに。
少しだけ、違う感情が混ざり始めていた。


