完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
会場の空気が落ち着いた頃、私はそっとその場を離れた。
お手洗いに向かうために。
「……はぁ」
人の少ない廊下に出た瞬間、張り詰めていたものが一気に緩む。
さっきの発言、場違いだったのは分かってる。
でも……大我さんのあの時の表情が、どうしても忘れられなくて……
黙っていられなかった。
「……大丈夫かな」
小さく呟く。
大我さんのことも、要さんのことも考えすぎて、頭の中がぐちゃぐちゃだった。
少しだけ落ち着こうと、お手洗いの後に廊下の奥へと歩く。
その時だった。
「……すみません。お一人ですか?」
急に声をかけられ振り返ると、見知らぬ男性が立っていた。
整った身なりに、柔らかい笑顔。
けれど、その視線はどこか遠慮がない。
「え、あの……」
言葉に詰まる。
「先ほど会場でお見かけして、ずっと気になっていたんです」
一歩、距離を詰められる。
「よろしければこの後のダンス、一曲ご一緒しませんか?」
「い、いえっ申し訳ありませんけど……」
やんわり断ろうとするけど、引いてくれない。