完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「そう言わずに。せっかくの機会ですし」

さらに一歩近づかれ、逃げ場がない。

周りを見ても、迅さんの姿は見えない。

どうしよう、結構しつこそう。

「――その必要はありません」

突然、低く静かな声が割り込んだ。

「っ……」

振り返るよりも先に、その人の腕が私の肩を引き寄せる。

「……要さんっ!」

いつの間にか、すぐ隣に立っていた。

男性の表情がわずかに変わる。

要さんは、そのまま相手をまっすぐ見据えた。

「私の妻に、何かご用ですか」

一切の迷いのない声。

〝妻〟って……!

空気が一瞬で張り詰め、男性は動揺していた。

「……っ、いえ……まさかご結婚されていたとはっ……失礼しました」

軽く頭を下げると、そのまま足早に去っていった。

その場が一気に静まり返る。

「……」

要さんは何も言わず、私を見下ろしていた。

その視線が、少しだけ怖い。

「すみませんっ……」

思わず、俯く。

「一人で動くなって言ったよな」

「……はい」

「目を離せば、すぐこれだ」

ため息混じりにそう言う。

怒ってる……よね。

でも、その手はまだ私の肩にあって。

離す気はなさそうで。

「……っ」

胸が、ぎゅっとなる。

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