完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
嫌な予感が、背筋を走る。

男は血を吐きながら、笑った。

「坊っちゃんの〝大事なもん〟がどうなってるか……」

「……っ」

「会場に行ってみろよ」

息を詰まらせるような間のあと、

「面白ぇもん、見れるぜ……」

その言葉を最後に、力が抜ける。

意識を失ったのか、ぐったりと動かなくなった。

「……チッ、肝心なとこで落ちやがって」

舌打ちが漏れる。

……嫌な予感しかしねぇ。

今まで感じたことの無い焦りがこみ上げてくる。

「要様」

迅が低く呼ぶ。

「会場に戻りましょう、あちら側の気配が……妙です」

「ああ」

もう、迷ってる時間はない。

胸の奥で、嫌なざわめきが膨れ上がる。

花音、無事でいろ……

歯を食いしばりながら、一気に会場へと駆け出した。

迅も今まで見た事が無い、焦ったような表情をしている。

勢いよく会場の扉を開けたが、さっきまで華やかだったホールは、まるで別世界みたいに静まり返っていた。

割れたグラスに倒れた椅子。

逃げ遅れた数人の来賓が、部屋の端へ追いやられている。

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