完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~



獅堂家へ戻る頃には、空が少し赤く染まり始めていた。

玄関を入ると、使用人たちが一礼する。

その奥に……

「お帰りなさいませ」

迅さんの姿があった。

「迅さん……」

思わず背筋が伸びる。

おでこにキスをされた以来、なんとなく目を合わせづらい。

迅さんはいつも通り落ち着いた表情だったけれど、私は勝手に緊張してしまう。

「早乙女様のご様子はいかがでしたか?」

「えっ、あ……げ、元気そうでした!」

慌てて答えると、迅さんが小さく笑った。

「それは何よりです」

その時だった。

「……お前ら、なんか変だな?」

要さんの低い声が落ちる。

「っ」

心臓が跳ねた。

迅さんは一瞬だけ沈黙したあと、静かに口を開く。

「……実は」

「迅さん!?」

止めようとしたけれど遅かった。

迅さんは笑顔のまま言った。

「先日、花音様のおでこにキスをしてしまいました」

数秒、空気が止まる。

「……は?」

要さんの眉間にしわが寄る。

「ちょっ、要さん待っ――」

その瞬間。

ゴッ!!

要さんの拳が、迅さんの頬に綺麗に入った。

「迅さん!?」

私は倒れ込む迅さんの方へ、慌てて駆け寄る。

迅さんは頬を押さえながら、はぁ……と息を吐いた。

「やはり殴られましたか」

「当たり前だろ!!」

要さんが珍しく声を荒げる。

< 321 / 325 >

この作品をシェア

pagetop